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2010年 06月 30日
「じいちゃんが花火をあげてくれるよ」
幼なじみの香奈ちゃんがそう言って、僕を呼びにきた。 「まだ6月だし、花火なんかやらないよ」 僕はそう答えたけれど、香奈ちゃんはまるで僕が出てきて当然という風に、玄関で僕を待っていた。 翌日、僕は町を出て行くことになっていた。 父さんと母さんの「オトナノジジョウ」とやらで、僕はそんなのは嫌だったけれど、母さんと一緒に町を出ることにした。父さんが悪いのかどうかは何も知らなかったけれど、僕は母さんを守らなければいけないような、そんな気がしていた。 そんな大げさな話じゃない。 1キロもの長い橋のかかる大きな川を渡って、二つ隣の市に引っ越すだけのことだ。 僕が自転車でこいだって、帰ろうと思えばいつだって帰ることはできる。 でも、きっとしばらくは帰らないだろう。 ずっと帰れないかもしれない。 そんな風に思うと、僕はひどく寂しい思いがしたのだけれど、「男の子は寂しいとか悲しいとか外に見せるものでない」と父さんに言われてきた言葉を思い出すと、クラスの誰に引っ越しのことを聞かれても、適当に話題を変えて、自分の気持ちは話せなかった。 「早く早く」 香奈ちゃんに促され、僕たちは小学校の校庭についた。 来年の3月になれば、この学校を卒業できたのに。 香奈ちゃんや、他の沢山の友達が、幼稚園からずっと一緒だった。 香奈ちゃんのじいちゃんのことも、小さい頃からよく知っている。 花火職人のじいちゃんに、作業所を見せてもらったこともある。クラスのみんなを招待してくれた後は、子供だけで行ってはいけない、と言われていたけれど、じいちゃんは香奈ちゃんと僕だけを何度か誘って、仕事の合間に話をしてくれた。 「で、涼は何色の花火が好きなんだ?」 聞かれて僕はとまどった。どの色の花火も全部好きだった。花火は大好きだった。でも、花火が終わった後の静かな時間の切なさを考えると、僕はなんだか逃げ出したい気持ちになって、本当は花火のことだって好きだったのかどうか、いつも、いつも、わからなかった。 「好きな色はないのかい?」 もう一度聞かれた時、僕は 「青」 とぶっきらぼうに答えたと思う。 その前の夏に見た、珍しい青い花火の色が忘れられなかった、ただそれだけの理由だった。 「青は花火ん中でも一番難しい色だ」 じいちゃんはそう言った。 ある日、僕はじいちゃんに唐突に言った。 「僕は花火が好きなのかどうかわからない。花火なんて本当は嫌いなのかもしれない」 じいちゃんは手を止めて、じっと僕を見て言った。 「作ってるオレだってそうだ。花火なんて本当は嫌いかもしれねぇな。うまく出来た花火を無事に沢山打ち上げたのを見届けた後は、まったくそんな感じだぁな。涼とおんなじだ」 そう言うとじいちゃんは笑ってくれたんだ。 僕はじいちゃんのその時の笑顔にとても安心したことをずっとずっと覚えている。 「8時に花火が上がるんだよ。一発だけの試験玉」 香奈ちゃんが言った。近所の打ち上げ職人さんと上げる試験玉のことは、普段、町の一般の人に知らせることはない。ほんの限られた人たちと、香奈ちゃんと僕だけが知っている花火の打ち上げ。 香奈ちゃんはずっと腕時計を気にしている。 去年の誕生日に買ってもらった、お気に入りの腕時計だ。 どん。 僕たちは慌てて空を見上げた。 校舎の斜め上の余り高くない位置に、大きな大きな菊の花のような白い花火があがった。 すうっとまだ早い夜空に吸い込まれていく花火の残骸を見つめたまま、香奈ちゃんが聞いた。 「涼太君、花火嫌い?」 少し考えた。いや、本当は考えてなんかいなかったのかもしれない。 「わからないよ」 僕の引っ越しのことを知って、こうして試験玉の打ち上げを見せようとしてくれたじいちゃんに聞かれたのだとしても、僕はどう答えたらいいのかわからなかった。 たった一発の花火。 唐突だったけれど、楽しみにしていなかったと言えば嘘になる。 そして、大輪の花火の余韻では到底足りないほど、この町の思い出は大きいのだと、その時はじめて僕は気づいた。 一瞬、細い、祭り囃子の横笛のような音が遠くで響いた。 僕たちは音の鳴った方を、さっき花火の上がった空を、見た。 もう一度花火が上がったのだ。 青い花火。 そして、何発も、何発も。 まるで、笛に応えて威勢良く太鼓が鳴らされるような、変則的に繰り返されるリズムに合わせて踊るように、青い花火ばかりが形を変えて、広がりを変えて、何発も上がった。 僕たちは目を奪われて、そして、心も奪われて、ただただ空を見上げた。 やがて、空は静かになった。 花火の後に、花火はもう打ち上げられなかった。 空に吸い込まれた青い花火の後は、火薬の煙がもうもうと空を覆って、でもやがてそれも風に流され始めた。 その場にただ呆然と立ち尽くしていたことに気づいたのは香奈ちゃんの方だった。 花火が終わって、帰らなければいけないのに、僕たちはどちらもそれが言い出せなかった。 「だめだ。僕はやっぱり花火が嫌いだよ」 なんでそんなことを言ったんだろう。 でも、香奈ちゃんは僕がそう言うことを予期していたみたいだった。 「うん。じいちゃんも『オレも花火はでぇきれぇだ』って言ってたよ」 それを聞きながら、僕は前にじいちゃんが見せてくれた笑顔を思い出していた。 あれから3年経った。僕は中学3年生になった。 結局、僕は一度もあの町に帰っていない。 時々、僕はそろそろ父親の元に行く方がいいのかを考えたりもする。そんなことを話すつもりもないけれど、香奈ちゃんのじいちゃんに会いたいと、ひどく懐かしく思う時もある。 テレビのローカルニュースで、懐かしい町の夏祭りと花火大会の話題になった。 僕は「あっ」と声を上げた。 じいちゃんだ。 製作が難しいとされていた青い花火ばかりを集めて、大きな競技大会に花火を出品することになったという。その連作の花火の一部が、町の花火大会でお披露目されたというのだ。 画面がその時の花火を映し出している。 「おんなじだ」 あの6月の夜、小学校の校庭で香奈ちゃんと見たのと同じ花火だった。 ローカルニュースのキャスターが、そのコーナーの最後に、じいちゃんの連作花火の名前を紹介した。 花火は「涼」と名付けられていた。 じいちゃんがいつも僕を呼んだ、その名前だった。
by raphie
| 2010-06-30 20:02
| LenoxMA/Writer
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